然別湖は例年は解禁直後に訪れることが殆どだ。今年は6月13日に休暇をとり、平日の然別湖を楽しむ予定であったのだが、強風の為、釣りは休止となってし まった。今回の釣りはその代わりというわけではない。オショロコマが10m以上の深さに下がったという話を聞き、チャレンジしてみるかと思い立ったのだ。 だから、釣り場も宿も予約したのは2日前である。
10mから15mというレンジになると、普通の釣り方では手が出ない。そう考え、最初は阿寒湖のメソッドと同じように垂直にルアーを落とし込み、軽くアクションを加えながらリトリーブを行っていた。しかし、この湖水のオショロコマは深いレンジを回遊しているらしい。バーチカルの釣りでは目の前をルアーが通過すれば、反応しないわけではないだろうけれど、魚探でもない限りはかなり厳しい釣り方のようだ。数回、ルアーを追いかけてきたオショロコマがいたけどバイトには至らなかった。帰り際、一度だけ15m落とし込んだ直後のジャークで乗ったけれども、これは例外であろう。
最終的に一番アタリが出たのは、超スローで重量級のスプーンを使ったトローリングである。多用したのはヘブン16gだけど、18gの他のスプーンでは反応が無かった。思うに、超スローでレンジ(深さ)を稼ぐこの釣り方では、スプーンの種類によって全くアクションをしてくれないからだと思う。泳がせるという意味では、幅広でRの強いスプーンが有効だけど、この手のスプーンは泳ぐかわりに浮き上がりやすい。結局のところ、手持ちで反応があったのがヘブンという事なのだが、実際にはもっと小型のスプーンやミノーが有効であろう。しかし、普通の道具ではそれらを沈める事は出来ない。
今回は出船時に霧が立ちこめていた。この対応として、受付ではコンパスを参加者全員に手渡していた様だ。小さな湖とはいえ、南北を間違えると帰還出来なくなるから当然であろう。竿を出さず、湖中央までボートを漕いだ頃、湖面の霧はなくなり、青空も見えていたのだが、昼過ぎくらいに音更湾から濃い霧が湖に流れ込んできた。
然別湖に生息する魚は、オショロコマ(ミヤベイワナ)とサクラマス、そしてニジマスである。あと、ウグイやワカサギも生息しているようだ。元々、オショロコマだけが生息する筈なのだが、例によって色々移植されているようだ。
このニジマスだけど、今時期はこれを主に狙っているアングラーも多いようだ。僕はといえば、オショロコマ専門に狙っている変わった釣り師なのかもしれない。湖中央のみ竿を出しているのも、ニジマスやサクラマスを釣る気はないからである。ところが湖中央の深場で二回ほどニジマスが喰ってきたようだ。1本目は途中でバレたけど、かなりラインを出されたのでそれなりの型であったと思う。写真のニジマスはヒット後、水面を何度も割った好ファイターであった。そういう意味でニジマスの釣りは楽しいという事も理解するけど、やはりこうした湖水には似合わないと思うのは僕だけだろうか。
一番濃霧に覆われた頃、ボートからは360度全く何も見えない状況となった。コンパスを首からぶら下げているので、帰還するには問題はないのだが、禁漁区の境界線近くでボートを漕いでいた僕は、GPSを頼りに操船していた。ただ、やはりこれにも限界があり、モニタを点灯したままではバッテリーが持たない。最新機種であれば、その点は改善されているのかもしれないけれど、僕の機種は既に廃番商品である。もっとも、使用頻度を考えると高価なGPSをそうそう買い換えるという事は出来ない。最悪はスマートフォンという手もあるけれど、湖上の電波を考えると、これとて多用出来るわけではない。最終的には昔からのアナログ機器(コンパス)は必須という事なのかもしれない。
帯広で一泊した後、そのまま帰らず、十勝の海岸線に点在する湖沼を訪れてみた。長節湖(ちょうぶしこ)、湧洞湖(ゆうどうこ)、生花苗沼(おいかまないぬま)、ホロカヤントーがその湖沼である。全てが海跡湖であり、汽水湖である。この周辺にはあまり訪れる人も少ない原生花園も点在しており、それを訪れるのも帰還日の目的であった。
どこの場所も良かったけれど、その中で豊北原生花園のハマナス群落は見事だった。
距離も近くにあり、同じ海跡湖である湖沼群も周辺の景色の違いにより、それぞれ違った印象であった。それでも周囲に湿原が存在し、今なお良好に自然が保たれている場所だと感じた。湧洞湖などはジェットスキーの音が耳に付いたけど、平日は訪れる人も少なく、素朴は自然が迎えてくれる筈だ。それぞれ海岸線には原生花園が発達しており、多くの花が咲き乱れていた。土地の人はそれが当たり前の風景だし、見慣れているということもあるのだろうけれど、日本の中でこんな自然が残されている場所はそう多くはない。