二年ぶりに道東の湿原河川を訪れた。今回の流域は月末近くなってからの方が本格化すると思うのだが、魚の都合で遠征をかける事も難しく、大抵は三連休にアタックという事が多い。今回は仲間が多く集まった為、上流域組と下流域組に分かれ、夜明け前に入渓場所へ集合をした。釣りをするのにここまで大袈裟なアタックをするのは、この水系の入渓点が非常に限られることが理由だ。先手必勝とは言えないのが湿原流だけど、やはり先行されるのは遠征故に避けたい気持ちも大きい。
この川はタイミング次第だけど、最下流から最上流域までは釣り場として成立する。上流域は過去に探った事もあるけど、個人的に好きなのは下流域である。但し、水量や水深があるので、ある程度の慣れは必要だと思う。また、ティップのみである程度は自在にキャストが出来ないと釣りにならない。
そんな僕が下流域で多用するのはRAPALA CD7とCD9、及び、シュガーディープなどのディープダイバーミノーである。とにかく魚を釣りたいという事であれば、ディープダイバー系は非常に有効だ。それでも、僕は圧倒的にRAPALAを使う事が多い。特に対岸のバンクを攻めるには、着水直後に泳ぎながら沈むRAPALA CDがないと話にならない。最近のルアーでも勿論釣れるだろうけれど、ロストの危険も大きい原野河川では安いRAPALAの方がありがたい。もっとも、RAPALA CDというのは飛距離は出ないルアーであるけど、サイズを変えれば渓流からソルトまで対応する。CD7や9になると引き抵抗が大きいので、それなりのロッドが必要だという事はあるにしても、道東では欠かせないルアーの1つだとは思う。
僕らが狙うこの川のアメマスは越冬遡上群と思われる個体で、大きさは35~45cm程度がアベレージである。そんな小物を釣って楽しいのか?と言われると、この川に関しては最高に面白いと思う。この川のアメマス釣りは大物狙いの釣りとは違い、ストラクチャーを読み、ピンポイントキャストを試み、鼻っ面に沈めるという繊細な釣りなのだ。下流域は水深もあるので、流れを読み、着水点を判断しなければならない。倒木下へ流し込むのはテクニックとは違うけど、経験がものをいう釣りであるのだ。だから、初めてこの様な川で釣りをする釣り人はかなり戸惑うに違いない。
反面、取り込みは基本抜き上げである。故にラインも最低10ポンド以上でロッドもそれなりのパワーは必要になる。ただ、ガチガチのロッドであると葦の間にティップを入れてというキャストに難があるので、バランスは必要であろう。僕はUFM(既に廃業)のSST77を使っているが、この釣りにはマッチしているようだ。
先に書いたけど、この川のアベレージは40cmを少し切るくらいである。中型だけど、砲弾型をしている白銀色に輝くアメマスである。ただ、今回はこのようなアメマスは非常に少なかったと感じた。釣れるアメマスは大きく、色も黒っぽいものが多いのだ。産卵前とみえて、丸々太っている個体が多かった。本来、こうしたアメマスが釣れるという事は今年はタイミング的にはまだ早かったと思う。お盆過ぎに産卵遡上する魚は本来は最上流域まで遡上している筈なのだが、下流域にまでこうしたアメマスが居るという事は産卵時期も遅れている様だ。
この水系で湿原の中で釣るという場所は本流についてはその通りなのだけど、支流域については原野の丘陵地帯を流れる方が多いかもしれない。支流域で湿原の釣りが楽しめるのは僕が知る限りで二カ所であろうか。他の支流も湿原を流下しているけど、釣り場として入渓場所がないなどの理由で僕は訪れた事はない。
何れにしても、湿原の中を釣り歩くのは独特の雰囲気を感じ、これぞ道東を言える釣りだと僕は思っている。モノトーンは大袈裟だけど、湿原は夏場に葦が少し緑になるだけである。基本的に四季を通じてあまり雰囲気が変わらない。殺風景と感じる人が殆どだろうけど、僕の様に道東が好きな人間はこうした風景に心を打たれる。
それは出来ない相談だけれども、出来る事ならずっとこの場所に居たいと思う気持ちが芽生えてくる。今回の様に好天に恵まれ、寒くもなく暑くもなく・・・魚の反応もそこそこであり、これ以上の日はあるのだろうかとさえ思ってしまう。勿論、冬には厳寒の寒さに凍え、夏は背の高さを超える葦や灌木に侵入を拒まれ、あるいは羆の恐怖に怯えという世界であることは判っている。でも、湿原と川、所々に沼が点在する場所はいかにも道東らしい景色の1つであるのは間違いないと思うのだ。
モノトーンの湿原を目指した今回の遠征で多くの場所で紅葉に目を奪われた。今年は紅葉の当たり年と言われているけど、実際にその通りで山々は色とりどりに染まっている。特に素晴らしかったのは阿寒国道のピリカネップ周辺であろうか。阿寒湖まで行ってしまうと、針葉樹が増え、広葉樹はまばらになってしまうけど、ピリカネップ周辺は広葉樹の方が多いという事も理由の1つだと思う。
阿寒湖を過ぎ、足寄経由で帰還しようと考えていたけど国道は渋滞気味であり、先を走っている車群全てが足寄方面へ左折する光景をみて、車を直進させ美幌方面へ向かった。もっとも、かなり遠回りになるのは覚悟しなくてはならない。それでも、渋滞する道を進むよりは僕にとってはマシなのだ。そんな国道沿いの道の駅で軽い昼食を食べ、何を思ったのかチミケップ湖へ車を走らせていた。勿論、釣りをしようと思ったわけでは無い。阿寒湖と並ぶヒメマスの原産地と知られる山上湖はこれまで一度も訪れた事がなかったからなのかもしれない。
チミケップ湖は湖畔に一軒の宿はあるものの、周囲は未舗装路が続く山間の静かな湖であった。紅葉も進んでおり、鏡のような湖水に紅葉が映し出されていた。