2012 西表島のリーフ

昨年秋の石垣島で、初めて体験した南国のルアーフィッシング。究極のターゲットはロウニンアジ(GT)という事になるであろうけど、国内のGTは数日釣って一本も釣れない事も珍しい事ではない釣りという話を聞き、旅行中のたった1日で挑戦するにはリスクが大きすぎる。また、タックルもヘビーであり、例えレンタルでまかなったとしても、消耗品であるルアーはそれなりに揃えておく必要があり、いずれにしても現時点で挑戦するのは無謀であろう。

リーフの釣りは必然的にライトタックルの釣りとなってしまうのだが、その代わり釣れないリスクは少なくなるし、旅行中の思い出として楽しむにはもってこいの釣りでもある。今回は石垣島ではなく、西表島が拠点となる為、数ヶ月前から釣りの情報やガイド業者を色々物色した中で目に付いたのが MARINE BOX さんである。

八重山諸島で与那国島を除き、一番西に位置するのが西表島である。

祖内漁港から出港し、陸路の無い船浮集落を過ぎ、網取湾を目指した。

お店は上原地区にあり、メインのフィールドは西表島西海岸。もっとも、これはリーフフィッシングの話でGTやジギングなどでは無人島への遠征も行っているらしい。出航は祖内漁港からマギーガーラ7号(32フィート艇)で出港となった。この祖内は西表島でも歴史がある土地で、近くには西表の地名や星立(地図では干立)など伝統的な集落が残る土地である。

ガイドはマリンボックス西表さん。船はマギーガーラ7号。GTのイラストがしゃれている。

中央に見えるのが、陸路の無い集落である船浮。白浜港からの小型定期船が交通の手段である。

目指すポイントは網取湾。祖内漁港から西へ向かうと、白浜集落がある。道路で行く事が出来る最西地でここから船でしか行く事が出来ない船浮集落を通り、更に西にある二つ目の入り江が網取湾である。かつては集落があったとの事だが、1971年に廃村となり、現在は東海大学の施設があるのみである。この為、事実上は無人であり、訪れるには船かトレッキングを試みるしかない。

船浮周辺は入り江や島があるなど変化に富み、道路が無い為に景観は素晴らしいものがある。

網取湾。東海大学の研究所があり、完全な無人というわけではないが、珊瑚と海の美しさは素晴らしい。

網取湾は先の東海大学の施設(元々は網取小中学校であった建物との事だ)があるのみ。この為か珊瑚の状態は非常に良いように思える。透明度の高いリーフを眺めていると、色々な珊瑚が豊富に生息していた。石西礁湖では死滅した珊瑚も多いのが現実なのだが、ここではこの地本来の姿を見たような気がするのだ。

午前中は潮位が低く、リーフへは入れなかった。深場でジグを落とすと、バラハタが姿を見せてくれた。

これは船長兼ガイドの宮城氏が釣り上げた4Kg級のミーバイ。自作のインチクでの釣果である。

釣りの方は午前中は潮位が低いため、マギーガーラ号ではリーフに入れないそうである。小型艇であれば可能かもしれないけれど、こればかりは仕方が無い。ジグを持参していたので深場(と言っても20~30mというレベルなのだが)でジグを落とし込んでいると、バラハタが釣れた。ガイドの宮城氏は自作のインチク(というのだろうか)を使ってのジギングで良型のミーバイを釣り上げた。上の写真がそれで、この地では高級食材でもある。ガイド氏はレストランも経営しているので食材という事でこれはキープ。僕も昨年食べた魚だけど、確かに美味しい魚の一つだと思う。

ただ、天候は晴れているものの台風六号の影響で風が強く、リーフエッジは真っ白である。外洋は時化ているようで、高速船も波照間航路は欠航が相次いでいた様だ。西表西部は比較的穏やかであった様だが、宿泊している東部の大原では、宿を出ると結構な風が吹いていた。祖内集落では風は穏やかであったけど、網取は時折、10m以上の出し風が吹いていた。船も風下へかなりの早さで流され、キャストも風下以外は糸ふけが多く、しかも予想以上に船が流れている為、かなりの制約があったのも事実だ。

空を見上げると、夏本番の積雲が。昼頃、太陽はほぼ頭上にあるのが八重山である。

八重山諸島は北回帰線の少し上に位置している。この為、夏至を少し過ぎただけの今時期、昼頃の太陽は正に頭上にある。また、亜熱帯とはいえ、季節は夏。雨は突然やってくる。「雨来そうですね」と宮城氏が言うと山側に黒い雲がかかっているのが見える。そうしているうち、バラバラバラと音を立てて水しぶきを上げた雨が文字通り向こうからやってくるのが見えるのだ。降っていない場所と降っている場所が、ハッキリ分かれているのが肉眼でも見える。しかし、季節は夏。思わず、ひるんでしまうもののこの雨は体をクールダウンしてくれる。

この雨は一瞬というのは大袈裟だけど、数分降っていただろうか。一気に雨は止み、直ぐに日差しがやってくる。文字通りスコールという降り方なのだが、数十分もすれば乾いてくれる速乾性のシャツやパンツは非常に有り難かったね。

イシミーバイ。これは同種では比較的大型の方だ。(25cmくらいが最大らしい)

イソフエフキ ルアーは今回大活躍であるRAPALA CD9 パーチ。この魚はリーフの好ファイターである。

アミメフエダイ。昨年の石西礁湖では良く釣れた魚だが、今年はこれ一匹だけだった。

午後1時過ぎ、ようやく潮位が高くなった頃に本格的なリーフフィッシングの開始。魚は泳いでいるのが見えるから、魚影は濃い。しかし、簡単に爆となるほど甘くは無かった様だ。それでも時合というのか恐らく潮の動きで喰いが立つ時間は、連発もあったのでこの釣りもタイミングが全てだという事だと思う。また、僕は全てシングルフックへ換装していたけど、バイトはあるものの思った以上にリーフの魚は俊敏であり、フッキングに泣いた1日であった。

また、珊瑚や岩が点在している為、バイト後は一気に魚を浮かさないと根(珊瑚の下や岩)などに潜られてしまう。例え、魚が小型であっても、バイト後に魚を浮かせないとそれでアウト。後はラインを切るしかなくなってしまう。

リーフの釣りであれば、TOPも面白いと思う。また、その手のタックルも用意して向かったのだが今回はRAPALA CD9 パーチを多用した。というのも、明らかにバイト数が違うのだ。ガイド氏曰く、このルアーだけで十分釣りになるとの事である。ただ、TOPの魅力もあるのは事実だけど、湾というポイントを考えると回遊魚的ではない様な気がしたのだ。但し、一度だけ湾の沖に鳥山が立った事があった。その時はペンシルなどの大型が良いとアドバイスを貰ったので、ケースバイケースというところでしょうか。

この鳥山は二人でキャストを繰り返したけど、残念ながらバイト無し。それでも高確率でアジ類が来ることが多いそうだ。こればかりは残念だったね。

手つかずの自然が残っている。リーフの美しさを眺めているだけで、気分が良い。

雲一つ無いという空は、西表では少ないのではないだろうか。常にこの島で雲が作られている様な気がする。

コクハンアラの幼魚。大型になると斑紋が消え、真っ赤な魚体となるらしい。1mを超える個体もいるという話だ。

帰港近い時間となり、祖内近くのポイントで一投目でコクハンアラが釣れた。まだまだ小さい幼魚だが、大型は1mを超えるそうだ。そんな時、船の近くで黒い大型の体高がある魚が水面近くで何かを咥え、反転して水中に潜っていった。ルアーをキャストすると、数秒ルアーを追ったのだが見切られたのかバイトすることはなかったけど、あの魚は何だったのだろうな。色からすると、アジ系ではないと思うけどね。昨年と同じでバイトしないけれど、何だこれは?という思い出だけを残し、夕方4時に祖内漁港へ帰港する。

この時間だというのに、太陽はまだまだ高い。帰り道、マングローブの釣り話を聞いた。ピンポイントキャストが必須でしかもTOPで出るという面白い釣りのようだ。理想は満潮で川に入り、下げを狙う釣りだとか。次回、チャンスがあればこんな釣りもしてみたい。そう感じた西表の釣りであった。

祖内漁港。この地名は沖縄で何カ所かにある。琉球王府の時代から番所が置かれた歴史がある集落とのことだ。

午後4時過ぎだというのに、影はまだ短い。この地はこの時期8時くらいまで明るいのだ。