2011 知床の夏

知床のサンライズ。国後の島影がとても絵になる光景だ。

滝の下ポイントより基幹部方向を望む。

滝の下ポイントより岬方面を望む。

国後島と釣友のシルエット。

岸際でバレを連発し、ようやくランディングしたカラフトマス♂

この時期は釣れる殆どが白銀色のスプリンターである。

半島先端部は常に羆の心配をしなくてはならない。

知床半島のこの景色を見たくて、毎年通うようなものなのだ。

渡船途中の岩礁でカモメが舞っていた。

知床横断道路から国後島を。羅臼は国境の町であることを、思い知らされる。

今年はカラフトマスの豊漁年と言われている。確かに昨年に比べ、走りの時期でも少なからず魚影は濃いと感じられるのだが、数釣りをするのであれば月末か九月の方が間違いはないところだ。反面、河口近くを回遊するような魚は体が黒ずみ、引きも数段弱くなってしまう。群れ次第では大釣りの可能性もある盆の釣りだけど、基本的には白銀色をしたスプリンターのファイトを楽しむという事を第一に考えていた方が良い。その意味でこの時期の釣りは雌よりも雄が掛かって欲しいと切に思うのだ。雌の抱いている魚卵は食という意味では魅力的だけど、釣りの楽しみという事については全く雄の比ではない。

そんな今年の知床は、のんびり釣ろうぜのまあきち氏と二人で先端部に最も近い滝の下へ渡った。初めてのポイント故、上陸するまで釣り場のイメージが沸かなかったけど、船着き場から暫く歩き到着した釣り場は崩れ滝に近い雰囲気であった。すなわちゴロタ石と岩が点在する磯である。違うのは滝から少し距離があり、明確な河口が存在している事だろう。ポイントはあまり移動せず河口正面の岩よりキャストを繰り返したけど、水深は思いの外浅いようだ。根掛かりが頻発し、ルアーのロストも少なからずあったからね。その意味では干潮より満潮時の方がルアー向きだと思うし、可能な限り到着時に高い潮位のタイミングが釣りやすい筈だ。

今回は早朝魚が群れていた様で反応は少なからず多かった。結果的に8時まで釣り、ランディングしたのは3本(一本はスレだが)だったけど、実際には波打ち際まで寄せたのが3回ほどあったので、上手に取り込めばマアマアという状況であったと思う。寄せてからバレを連発したのは、中途半端な岩場から釣っていたので、タモは不要と岩のスリットに引き寄せようとしたからである。ただ、それは結果論であり個人的にはそれはそれで良いと感じている。何が何でも持ち帰りたいという人にとってはけしからん話だろうけど、リリースしたと思えば惜しくも勿体なくもないのだ。

高い船賃を払って、それじゃあ勿体ないじゃない?という人もいるだろうし、それが間違っているとも言わない。でも、僕の価値観では結果的に沢山釣れるのは嬉しいけど、知床半島先端部の景観を眺められるだけで半分以上は満足なのだ。だから、数匹でも手元にあればそれで十分。そんなスタンスで知床の釣りを楽しんでいるので、取り込みも周りに迷惑かけなければ適当も良いところである。

話は戻るけど、7時くらいからアタリが遠のいてきた。大潮故に潮が引いてからは、沖の岩へ渡ってロッドを振ったけど徐々に反応が薄れてきた。フレッシュな群であれば、日中でも喰わない事はないのだが、やはり潮位が落ちているので群れが離れたと考えて良いのかもしれない。そんな頃、岩場に一匹のキタキツネが姿を現した。川で冷やしてあるマスを取られないか心配だったのだが、観光地の餌付けされたキツネとは違い、非常に警戒心が強いようだ。一定の距離より人には近づいてはこない。

そんなことがあって暫くした時、沖で停泊していた渡し船が岸に寄ってきた。船頭が「上がれ」と言っている。予定時間までは二時間ほどあったのだが、上がれの声にさては羆でも出たんだろうかと船に乗り込むと、釣り場近くの岩陰に茶色い羆が姿を現した。釣っていた場所にほど近く、僕らは全く気がつかなかった。羆自体はまだ小さい。また、知床半島の羆は人間に慣れているというか恐怖を感じていない個体が増えており、直接襲われる事は少ないかもしれないけど、僕らは釣り人であり釣った魚を持っている以上、羆をおびき寄せてしまうのだ。

暫し、船上から羆の様子を見ていた。まだ時間があり、崩れ滝に立ち寄り「時間まで釣って良い。でも、羆の心配があるから、身一つで遊ぶ(持ち帰らない)だけで」と言われたけど、僕を始め誰も船を下りようとはしなかった。もっとも、これは羆云々より崩れ滝の船着き場からポイントが遠いという事もある。また、滝の下で釣った魚が傷まないかという理由もあり、結局皆が帰ろうという事で9時には相泊へ帰港した。先端部は僅かにウネリが入っていたけど、帰りは追い波であるため揺れは少なく、時間に余裕があるため船頭さんもゆっくり船を走らせてくれる。青い空が広がる中、先端部の荒々しい景観を楽しむことができるのは有り難い。

漁港で暫し船頭さんと話をしたけど、羅臼の渡し船では昨年から今年までの間に二人の方が亡くなってしまった事を聞いた。お二人共、顔見知りという間柄ではないけれど、どちらの方にも過去何度かお世話になった事がある。この場をお借りして、御冥福をお祈りします。