三月ともなると、道南地方は春の兆しが増し、海岸線の雪も少なくなる季節である。例年、こんな時期に釣り仲間が集まり、釣りは二の次で宴を開くのだ。もっとも、そこは釣り師で投宿するまでの間、各自が見立てた釣り場で竿を振るということも少なくはない。しかし、自分に関して言えば、ここ数年は初日は殆どが移動日であり、翌日も早朝から竿を振るという事であれば釣り師らしいとは思うけど、最近は宴会に比重を置いているので、翌日は宿で朝食を食べてからのアタックである。そんな釣りをしていて、魚が釣れるほど道南は甘くは無い。まあ、イワナなどであれば、こんなスタンスでも十分釣れるけど、今時期の道南は半数以上の釣り人はサクラマスを狙っている。
僕はといえば、サクラマスよりもアメマスが釣りたい釣り師だけど、何れにしても朝マズメというゴールデンタイムを外せば、その日の釣果は予想がつくというものだ。
太田山神社はある意味で全国区である。それはネットで日本一危険云々を語られる神社だからなのだが、僕は実際に本殿を訪れた事はない。それでもネットの写真をみると、急峻な山道を登り、最後は鎖をよじ登りようやく本殿というルートは承知している。ただ、精神的な部分はあるにせよ、日本一危険というのは大袈裟のような気がするけど、険しい事は間違いないようだ。そんな神社が太田海岸の国道沿いにあるのだけど、参拝して釣果を願う釣り人も多い様である。
渡島半島は細長い鰭の様な形をしているけれど、山は急峻で多くの場合、海岸線から山が始まるといっても良い。例外は比較的大きな河川周辺は扇状地が広がっていたりするけど、小渓流は河口から渓流魚が釣れるといっても大袈裟ではないと思う。そんな渡島半島は羆の生息数も多く、海岸から山が始まるということは、国道に近くても羆に遭遇する可能性も高いということである。特に太田から瀬棚までの海岸線は目立った集落もなく、海岸線でも羆の用心は必要だと聞く。
朝食を食べてから、釣り場に向かうというスタンスで良い釣果に恵まれるわけがないと思う。それは理解しているけど、宴会では毎度の事で酒を鱈腹飲み、早朝に目が覚めたとしても二日酔いで釣りなど出来るわけがない。結局のところ、釣りが目的なのか宴会が目的なのかということになるのだけど、若くもない今は、宴会をするとすれば釣りは諦める方が良いのかもしれない。8時半過ぎから11時くらいまでサーフを歩き、時には防波堤よりキャストを繰り返したけど、追いもアタリも一度もなかった。
しかし、そうした意味で道南は過酷である。最近の道東も昔のようにパラダイスではないとしても、道南に比べると釣れる気がするのだ。こうしたフィールドで結果を出すには、粘りと根性は必要のようだ。
あわび山荘を一言で言えば、昭和の雰囲気が漂う温泉旅館である。国民宿舎と銘打っているので、値段も手頃である。ただ、今の時代は客も目が肥えてきており、サービスを求める旅人向きではないと思う。個人的には最低限のサービスであれば、こうした宿は良いと思うのだが、宿の評価や口コミで普通のホテルや旅館と同列に論じるべきではないような気がする。
それはさておき、あわび山荘と名乗っている位なので、宿の料理はあわびが主体だ。もっとも、ベーシックな料金では刺身にあわびが1つ提供されるというもの。他の料理が食べたければ、追加料理という形で頼むか、最初からそうした料理が入ったコースで予約するかだろう。このあわびも実際には養殖されているもので、型も小さい。天然物に比べると磯の香りが薄く、身の締まりも今ひとつかもしれない。しかし、リーズナブルな値段で提供しているのだから、こればかりは仕方がないだろう。