霧多布
霧多布湿原は浜中町にある広大な湿原で、多くの花が咲く「花の湿原」の異名を持つ。比較的観光客も少ない為、海岸や湿原を横断する道路から、その様子を望むことが出来る反面、道東の海岸線特有の霧が立ちこめる事も多い。しかし、道東の霧が湿原に与える影響も大きく、仮に霧が無ければ湿原の存続に影響を与える筈だ。また、多くの植物も霧による夏場の冷涼な気候を元に生育しており、霧もこの地域の重要な要素の一つである。
霧多布湿原の代表するのが、エゾカンゾウ(エゾゼンテイカ)の花だ。湿原全体に見られるが、道道123号線沿いはまさに大群落となっており、遠目にみると黄色の絨毯が敷かれている様にみえるほど。訪れた頃はちょうど見頃だったが、この花はそれほど長期間咲いているわけでもなく、遠方から訪れる場合は多少の運も必要かもしれない。それでも7月の三連休付近は一つの目安になるとは思う。
エゾカンゾウの黄色の花は、人間の目にとても目立つ花だ。その中で、つい見落とし気味になるけれど、ノハナショウブの花が咲いている。フォーカスアウトしているが、上の写真の中央下側の紫色の花がノハナショウブである。場所によっては、この種も大群落を作り、1面赤紫色の絨毯のようになる。今回の遠征では野付半島や濤沸湖でノハナショウブの大群落をみかけた。
ノハナショウブはヒオウギアヤメと共に、道東の夏を彩るアヤメ属の代表種で、栽培されているハナショウブの原種ということだ。遠目にみると同じ赤紫色をしているが、花の基部に黄色の筋(模様なし)がノハナショウブで、ヒオウギアヤメは黄色と黒の網目模様がある。厚岸町にある「あやめヶ原」に群生しているのは、ヒオウギアヤメであり、こちらの種も道東で見かける事が多いけど、ノハナショウブを見かける事が圧倒的に多いと感じる。
野付半島(尾岱沼)
知床半島と根室半島のほぼ中間に位置する、日本最大の砂嘴(さし)が野付半島である。半島の基部が標津町であり、途中から別海町に属する細長い半島で、独特の雰囲気を持つ花の楽園である。道道や一部の遊歩道を除き、立ち入りが禁止されており、草木の他に野鳥も非常に多い。
個人的には道東の景観で好きな場所の一つで、この地を訪れると必ず半島を訪れる。この雰囲気は根室の春国岱(しゅんくにたい)にも通じるものがあり、湿原や草木が好きな人にとって、これらの場所は飽きることはないと思う。
尾岱沼(野付半島)における観光名所は、遊歩道奥にあるトドワラであった。ナラワラと同じ様に立ち枯れた木々が異様な風景を醸し出していたのだが、トドワラの多くは風化が進み、かつての立ち枯れた木々は消滅しつつある。数年前に久しぶりにトドワラを訪れたが、若い時分にみた景色とは異なっていた。その意味ではナラワラの方が見応えはあると感じる。
トドワラと異なり、ナラワラは近くでその姿を見ることは出来ない。道路沿いの駐車場から立ち枯れしたナラワラを観ることが出来るけど、霧が濃すぎるとその存在も判らないかもしれない。しかし、霧の中にナラワラが浮かぶ事があり、それは幻想的な光景となる。
ハマナスやエゾカンゾウなどの間にひっそり咲く花が、エゾフウロとハマフウロだ。両者はとても似ており、花だけをみても区別は付きにくい。調べたところ萼片(がくへん:花の付け根外側部分)に毛が生えているのがエゾフウロということだ。
広大な原生花園はともかく、野付半島の魅力は湿原の風景にあると僕は思っている。この砂嘴は複雑な地形をしており、入り江の多くは浅い海であり、陸地の植物と合わさり独特の景色を醸し出す。
小清水原生花園~濤沸湖
小清水原生花園は、恐らく北海道の原生花園の中で1番有名な観光地だ。知床からオホーツクの観光では、多くの場合に立ち寄る場所に入っており、実際観光客の数も非常に多い。ただ、国道を挟んだ濤沸湖を含め、この場所に咲く花は確かに魅力的であり、普段は観光地を外す僕も何度も立ち寄っている場所ではある。
ゼンテイカ属は本州を含め近似種が多く、名前もまちまちに呼ばれている。小清水原生花園に咲いている花はエゾキスゲと呼ばれており、エゾゼンテイカ(エゾカンゾウ)よりも色が薄い所謂レモンイエローである。
その他