10月の後半、紅葉に染まった山が落葉しだすころ、倒木あるいは生木に薄く茶色いキノコが姿をあらわす。別名ユキノシタとも言われるエノキタケで、霜が降りるような季節に発生するキノコだ。栽培されているエノキタケとは姿形が全く違うキノコだが、香りや味はやはり同じエノキタケだなと思う。違うのが傘を主に食べることで、ヌルッとした食感と歯ごたえがあり、食べ応えのあるキノコだ。
この時期、倒木(生木にも)に発生するキノコで、毒を持つものは少ないし、見分け方も慣れれば同定しやすいキノコだと思う。ラクヨウの様に誰もがこのキノコを採取するというわけではなく、タイミングさえ間違わなければ、収穫も約束されているのも嬉しい限り。
冷涼な気候を湿原河川の多い道東地方は、夏の終わり以後、川にアメマスの姿が多くみられるようになるけれど、道南地方でも渓にアメマスの姿を目にするのも同じだ。道東と異なるのが、厳寒期は海に下る個体が多いということ。冷水性の魚だが、アメマスの適水温は10度を超えた辺りと聞いているので、冬は水温の高い海に下るということなのだろう。逆に道東は冬の水温は海水故に氷点下を下回ることがある。淡水の方が暖かく、これからの時期は越冬遡上と思われる個体が川などの淡水域に入り込む。
冬には海に下る個体の多い道南のアメマスだが、鮭の産卵時期だけは鮭の後方に定位し、産卵でこぼれた卵を捕食している様だ。この為、渓流に鮭が姿を現すと、アメマスもその場所に集まってくる。それを狙う釣りがこの時期のアメマス釣りなのだが、鮭の数が多くなると、魚卵を偏食しだすようになる。こうなるとルアーでの釣りは、かなり厳しいものとなり、魚卵を模したフライを使った釣りが圧倒的に有利だ。
北海道の秋は、本当に足早だと思う。1週間前は赤や黄、橙色に覆われていた山は、今週は僅かな色に染まっているだけだ。川を歩くと落ち葉が流れを漂い、釣りという視点では釣りづらいことこの上ない。でも、そんな情景は秋から冬へ季節が移ったということだ。一昔前の様な釣果はなかなか望めなくなった北海道だけど、それでもなお自然豊かで魚影も濃い地であるのは間違いはない。
仕事も技術も生活も、大昔とは比べものにならない変化が続く世の中だけれども、フィールドの魅力だけは変わらない。そんな北海道の釣りを幸せだと感じた釣行であった。