アメマスの生息は道内全域であり、魚影の濃い道東も、西は十勝から東は根室までと広い範囲に生息している魚だ。それであるのに、こうした原野流を好むのは、他の釣り人や人工物を目にしないからであり、キャストの楽しさを感じることが出来る釣り場だからだ。
大型は70cmを超えるアメマスだけど、この時期に入るこの川では型は全く狙っていない。それどころか、アベレージは40cm前後であり、かといって必ず数が釣れるわけではない。
流域を変えれば、溜まっているであろう場所も承知しているけれど、この流域は数が釣れる保証は全くない釣り場である。勿論、過去には群れに当たり、ポイントには全てアメマスが入っていたという事もあるけれど、それよりもポイントを選び、そこへ正確にキャストして、魚を引きずり出す快感の方が勝る。それ故、南西諸島でもマングローブの釣りを好んでしまうのかもしれない。
そんな川の畔に車を停め、夜明けを待っていると満天の星空が広がっていた。新月に近く、街明かりの影響も少ないため、肉眼でも天の川がぼんやりと見えるほどであった。
二週に渡って、道東を通過した低気圧と台風の影響で原野の川も水位が上昇して、河畔林は一面水浸しであった。乾燥している場所は皆無と言ってもよく、場所によっては岸なのか川なのかが判らない。平水であれば、川底もかろうじて見える川なのだが、水位が上がっており、浅い場所以外では水底のストラクチャーも確認出来ない。但し、濁りは殆ど無く、水位だけが上がっている。こうした事実は、河川環境がほどよく残されている事を意味する。
魚影はそれなりに濃いのだが、水量の影響であろうか、ルアーへの追いはあるものの、バイトしてこない事が非常に多かった。型はバラバラで大型は50後半とこの川としては良型に入るが、そうした個体の殆どは産卵後の下りである。それでも、極端な細さがないのがこの川のアメマスの特徴で、これも生息条件が整っているからなのだろう。
その意味では一本目に出た50cm前後のそれは、コンディションも良く、素直にきれいなアメマスであったけど、昨年も書いたように40cm前後がこの川のアベレージであり、釣行タイミングというか、季節の移り変わりが例年と違っているということだ。
そんな川の復路で、突然ラパラに食いついてきた大きなイトウには本当に驚いてしまった。目測で80cmくらいと、イトウを狙っている釣り人にとっては、普通の良型レベルであろうけど、アメマス釣りをしていて、このバイトはまさに想定外である。幸いな事に反転で即バレしたけれど、完全にフッキングしていたら、ちょっとロッドが持たなかったと思う。中型サイズは何度か釣ったこともあるイトウだけど、支流とはいえ大型の個体も居るところには居るという事なのだろうね。
釣り場への往復で通った山々は、既に紅葉真っ盛りで青空にその色が映えていた。(そういえば、移動日は共に晴れており、釣りをした中日だけが曇りや雨と、天候のタイミングは良くなかった。)今年の色づきは例年に比べても、まあまあというレベルだと思う。勿論、タイミングもあるので自分の勝手な評価なのだが、そのタイミングさえ逃さなければ楽しめるシーズンではないだろうか。