夏の恒例となった西表行脚だが、今年は台風1号の影響で、旅程後半は西表島から撤収するという形に終わってしまった。予定していたマングローブの釣りも消化出来ず、その点は残念な結果だけれども、釣りだけを目的として西表島を訪れているわけではない。大自然の残る地を訪れ、そこに身を置くということが、自分にとっての癒やしになるからだ。
沖縄の夏と言えば、青い空と青い海は誰しもが思い浮かべる光景だと思うけど、西表島は島全体に手つかずのジャングルがあり、多くの川はマングローブ林が発達し、独特の景観をもつ。砂浜も数多いけど、殆どの場合にそれは自然の砂浜であり、沖縄本島の様な駐車場や脱衣所などの施設は皆無である。そうした意味では、泳ぐことも全て自己責任である為、海水浴場の延長でこの島を訪れるのはお勧め出来ない。但し、シュノーケリングやダイビングはガイド業者も少なからずある。勿論、それなりの料金は取られるのだけど、旅先にお金を落とすという意味では悪くない楽しみ方ではあると思う。
海岸線を走る道路から見える光景は、恐らく石垣島の方が珊瑚礁は美しく見えるかもしれない。実際の珊瑚については、西表島の方が豊富なれど、数多くの川があり、河口は上流から運ばれた砂で遠浅の海岸線になっており、見た目は石垣島の方が美しくみえる。それでも、海岸線をのんびり走ると、美しい海は西表島にも数多くある。人気のある竹富島の様に海岸線で人影を見ることも少なく、その意味で一人旅も似合う島かもしれない。
西表島にも宿泊施設が少なからずあるのだが、その多くは民宿であり、料金もリーズナブルである。リゾートホテルといえる宿は僕の知る限り数軒だけだ。僕はこの島では、島南部(南風見)にあるラティーダ西表に泊まる事が多い。民宿よりは高いけれど値段が手頃な事と、集落より少し離れた場所に建っている為、静かな時間を過ごせるからだ。また、近くの居酒屋も自分の好みであり、それが目的という事もあるのかもしれない。もっとも、僕の場合は自分のペースで過ごせるという部分も大きい。
亜熱帯と呼ばれる地域に属する西表島だけど、夏のそれは熱帯そのもので、昼頃は限りなく真上から陽の光が注ぐ。このため、晴れていても常に多くの雲が生まれ、積乱雲も発達する地である。このため、時折スコールに見舞われる事もあり、雨具は持ち歩いた方がよい。もっとも、僕の場合は身体が濡れるというよりも、カメラや電子機器などを水から守る為である。
しかし、雲というのは同じ形になることはなく、景色を眺めていても飽きることをしらない。日の出や夕暮れなどは、特に美しい風景をみせてくれるものだ。
船浮集落は、西表島の陸の孤島である。道路が通じておらず、集落を訪れるのは船しか手段はない(徒歩で行けない事もないのだが、一般的ではないであろう)。道路が通じている白浜集落から定期船が運航されているものの、これまで行くチャンスがなかった。今回は船浮でマリンレジャー全般をガイドしている「ふね家」さんのシュノーケリングツアーを利用して、この集落を訪れてみた。
メインはシュノーケリングなのだが、休息と昼食で集落を訪れるツアー予定になっており、集落の案内もツアーに含まれている。ただ、このタイミングで台風が八重山へ向かっているという事もあり、今後の予定をどうするかという心配があり、ツアーも心底楽しんだとはいえない。それでも、初めて訪れる船浮集落や、過去にリーフの釣りで訪れた網取湾の透明度は素晴らしかった。
6月下旬から7月上旬にかけて、沖縄地方ではサガリバナが開花する。独特の美しさをもつ花だが、夜に開花し、日の出後に散ってしまう為、咲いている姿をみるには、早朝からカヤックなどのツアーを利用する必要がある(過去には動力船によるツアーも開催されていた事があった)。
もっとも、早朝といっても西表のこの時期は日の出が6時前後である。ツアー開始はこれより1時間ほど早い5時頃なので、特別な早起きが必要というわけではない。もっとも、この花が多い後良川(しいらかわ)でツアーが開催される事も多い様で、上原や祖内など離れた拠点でツアーを開催している業者の場合は、それこそ3時半などという早朝に送迎という事も多い様だ。
僕も今回を含め、3度ほどサガリバナの観察ツアーに参加しているけど、後良川は素人目にみてもサガリバナの数が多いと思う。また、サガリバナのツアーは可能であれば、満潮時を狙った方がよい。理由は散った(落花)した花が水面に浮かび、流れている光景を見られる。また、カヤックの場合は、事実上流れの止まる満潮時の方が漕ぐのが楽だと思う。
サガリバナは多くの場合、まだ薄暗いマングローブ林の樹間に咲いている。また、揺れるカヤックの上から撮影する必要があり、ぶれを防止する為、感度設定はかなり上げる必要があると思う。また、カメラにもよると思うが、カメラ任せに撮影すると、花が露出オーバー気味となってしまう。掲載している写真は、感度はISO1600に設定し、全て1段から最大2段のマイナス補正を行う必要があった。
西表島に限らず、南西諸島の今時期は多くの花々が咲いている。その中には移植種も多いのだが、今のところ在来種への大きな影響は無いようだ。原色の花も多いけど、中にはイボタクサギの様に小さく可憐な花もあり、その種類も豊富である。
自然が良好に残されている西表島は、多くの鳥や動物を見かける事がある。写真撮影出来るかどうかは別として、リュウキュウアカショウビンの姿も二度ほどみかけた。道路には蟹が横切っているし、シロハラクイナの若鳥も何度かみかけた。宿泊施設の敷地内でも早朝に散歩していると、コテージ横でシロハラクイナの姿があった。
この鳥は石垣島や西表島では道路際に姿を見せることも多い反面、警戒心も強く、直ぐに姿をくらませてしまう。シロハラクイナは飛ぶことが出来るようだけど、僕は走っている姿しかみたことがない。この走り方も非常に速く、素早いものだ。
西表滞在の後半は台風の影響を考えなくてはならず、予定を1日前倒しして、石垣島へ戻った。台風が近づいているといっても、直前までは晴れの良い天気であり、那覇へ待避した日の午前中は風はやや強いかなというレベルであった。そんな合間に竹富島を訪れてみた。本来であれば、最終日は黒島か小浜島など、これまで一度も訪れていない離島へ渡りたかったが時間がそれを許さなかったのだ。
竹富島は石垣島から高速船で10分から15分程度(船の種類により速度が違うため)の距離であり、石垣島の港からも見える島である。この島は沖縄本来の赤瓦屋根を持つ町並みが保存されており、雰囲気は悪くない。但し、日中は多くの観光客が渡島するため、島内は多くの観光客で賑わう。このため狭い島の割には土産物屋や食事処も多い島だ。
この島へ宿泊し、日帰り客のいない時間を歩いてみたいと思うけど、西表島の自然の魅力が僕にとっては勝っており、未だ願いかなわずである。
<船浮湾と網取湾のシュノーケリング時に撮影した動画>
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