阿寒国立公園は、多くの火山と森、そして湖が存在する。その中で公園の中心地とも言える阿寒湖は、南岸の一部は大型ホテルが建てられ、典型的な観光地の様相を呈している。湖水には観光船が波を立てながら航行しているなど、知床先端部の様な自然観は薄めと感じる事がある。でも、湖水で竿を振っていると、否応にも眼に入ってくるのは阿寒周辺の深い森だ。雄阿寒と雌阿寒に挟まれた阿寒湖周辺は、北海道でも有数のとても深い森に囲まれているのだ。
ここ数年、阿寒湖で小型のアメマスが釣れることが、とても多くなったように感じている。それは僕だけでは無く、友人や阿寒湖在住の知人も似たような話をしていた。年に数度しか訪れる事のないから、本当のところは判らない。それでも、アメマスが主体という阿寒湖は、とても魅力的な湖である。
阿寒湖で所謂「北岸」と言われているのは、背後に林道が走り、正面に雄阿寒を望む地域の事だ。ポイントで言えば、ヤイタイの曲がり角から禁漁区までという事になる。点在するポイントは、湖岸沿いを歩いて移動出来るし、この地へは漁協で渡船による送迎サービスが行われている。これらのポイントは、対岸に雄阿寒の勇姿を眺めながら、竿を振る場所だ。右を向けば、あまり見たくは無い温泉街が見えるけど、正面を向いている限りは、深い森の奥に大きな山が見える。時折、忠類島へ向かう観光船が目の前を横切るけど、大抵は背後に鳥の声を聞き、雄阿寒に向かって竿を振る。ふと、対岸に眼を向けると、深い森が迫ってくる様に思える場所である。
今年の阿寒遠征は、釣果に恵まれたとは言いがたい。それでも、帰還時に漁協のO氏に聞いた限りでは、まだ釣りになった方らしい。特にLFMには、厳しかった1日だったようだ。僕が釣った限りでは、今回の阿寒湖ではワカサギ、それも新子サイズを偏食していたように思える。その証拠に、少しでも大きなミノーやスプーンには、何をやっても反応が無い。ミノーでも4~5cmの小型サイズに変えたとたん、反応があるなどという繰り返しだった。
魚がスレている場合に似た反応なのだけど、小型スプーンを使い、様々な誘い方をしても喰いは今ひとつ。反応の良かったミノーのサイズや形状を考えると、マッチ・ザ・ベイトを考えされられる1日だった。もともとルアーというのは、ある意味、リアクションの釣りだと考えていたけど、今回だけは餌に似たルアーの必要性を強く感じたね。
阿寒湖から帰還する際、必ずと言っていいほど立ち寄るのが、オンネトーである。国道を折れ、やや暫く走ると、目の前に雌阿寒がそびえ立っている。この光景は雑誌やポスターなどに使われる事も多く、山の雄大さを感じるポイントだと思う。この雌阿寒岳、北岸のポイントからはよく見えるのだが、温泉街からは木々に囲まれてなかなか全容を見ることが出来ない。また、阿寒富士は雌阿寒の陰になるため、その姿はオンネトーを始めとする足寄側から、その端正な姿を見ることが出来るのだ。
朝晩はまだまだ寒い阿寒湖を後に、十勝まで下ると、ようやく春らしい景色が飛び込んでくる。十勝地方は、元々は十勝川周辺以外、火山灰性の土地であり、農作物の栽培に適した土地では無かったと聞く。排水など様々な土地改良を経て、現在では日本有数の農業大国となった十勝だけど、開発されているのに何とも言えない暖かさを持つ土地である。広大な畑と防風林、遠くに日高山脈や阿寒の山々に囲まれ、平野を大河が流下する。
深い阿寒の森に恐れを抱き、厳しさを覚え、しかし、自然への憧れを強く感じる。広大な畑と、遠目にみる山々と川、これが十勝の田園風景である。暗と明、厳しさと豊かさ。上手く表現は出来ないけれど、間違いなく言えるのは、道東は魅力的な土地だという事だ。