お盆前に休暇となり、ゆっくりとした出発で道東の釣り歩きを行った。釣り歩きと書いているけど、大好きな道東旅行と合間に釣りをするというスタイルである。体力がある若い頃であれば、全ての日程を釣り歩くという計画を立てたと思うけど、今の体力それを行うと、職場復帰後が仕事にならない筈だ。そんな旅の最初は、道東の太平洋沿岸のアメマス釣りである。元々、この釣りは個人的には7月一杯が勝負と思っており、8月はオマケである。理由は色々あるけれど、アキアジ釣りの竿が並びかける時期であるし、8月になるとカラフトマスの噂が聞こえてくるからだ。
結局、太平洋岸のウミアメ釣りは坊主こそ回避したものの、不調に終わった。この釣りについては、よからぬ噂も耳にしているのだが、噂の域を出ず、釣れない理由は今のところ何とも言えない。ただ、波と濁りも強く、状況も良くなかったのも事実。何れにしても、この釣りも釣り人の増加が顕著であり、自分の中では少しばかりの変化を感じているのも事実だ。
道東、それも自分では極東と呼んでいる厚岸よりも更に東の地域は、釣りはさておき、道東の中でも魅力的な地域の一つである。殆ど観光的な物は無いけれど、素朴な自然がそこにある。釣りで訪れる春秋の荒涼とした雰囲気も良いけれど、短い夏の頃、そこは緑に覆われており、厳しい地の夏を感じる事が出来る。
霧多布湿原を横切る道道808号線は、大規模な湿原を横断する道路である。湿原を分断するという意味では、決して良い道路とは言えない。ただ、その道路のお陰で左右に湿原の広がる光景を楽しむことが出来る。
道東の太平洋岸およびオホーツク沿岸は、知床半島南側までこの時期は霧に覆われる事が多い。冷たい海水が温かい南風に温められる事によるものだが、好天を望むのであれば、秋に訪れるのが賢明だ。でも、深すぎる霧は全てを包んでしまうけど、ぼんやりとした霧は、いかにも道東という雰囲気をもたらしてくれる。この霧も内陸へ入れば薄れる事も多い。
世界遺産となった知床も、多くの河川に設置されている砂防ダムへ、魚道が構築されつつあるようだ。それでも冷涼なこの地は、渓流の優勢魚はオショロコマであり、ヤマメの魚影は決して濃いとは言えない。それでも、基幹部を流れる河川は規模の大きな川も多く、産卵環境が残されていれば、ヤマメも健在であるようだ。
僕は知床と言えば、釣れる殆どはオショロコマだと思っていた。この為、使うルアーも滅多に使わないスピナーか小型スプーンが殆どであった。でも、今回訪れた規模の大きな川では、ミノーを多用し、オショロコマもかなり反応してくれたのは新鮮であった。規模の大きな渓流は、オショロコマにとっても環境が良いのかもしれない。オショロコマの型も良く、ヤマメの魚影も濃かった様に感じる。
十勝へ赴任し、当時は餌釣りで南十勝の渓流を歩いていた頃、早い年では7月後半にヤマメが色づいてきていた。更に冷涼な知床の渓も同じようで既に僅かに色づき始めているようだ。
この沼は国道244号線を北上した際、小さな看板を見つけ立ち寄ってみたものだ。別海十景の一つということだ。訪れた沼は、沼の入り口に看板がある他は人工物も何もなく、沼の水面にはコウホネが黄色い花を咲かしていた。
知床半島先端部のカラフトマス釣りは、例年今時期が走りで、月末くらいにピークを迎える。後半になるほど、河口へ魚は集結している為、確実かつ数釣りを楽しむのであれば、お盆過ぎから月末あるいは9月の頭を狙うのが得策だ。但し、カラフトマスは河口近くに集まってくると、急激に成熟が進む。雄はセッパリとなり、雌は体型こそ変わらないものの、背中が黒く色づいてくる。後半戦はこのような鱒も多く、銀ぴかのフレッシュランを狙うには、早い時期の方が良い。但し、この時期は群れの有無に釣果は左右されてしまう。すなわち、沖を回遊する群れに当たらなければ、釣りが成立しないのだ。この点はかなりギャンブル的な要素もあるのだけど、一度この時期のカラフトマスを知ってしまうと、河口の魚は魅力を感じなくなってしまうのだ。
今回、唯一の反応があったのがペキンの鼻である。但し、軽く咥えただけの様でフッキングには至らない。同じタイミングで同行した仲間も反応があったと話していたので、このタイミングで魚が居たのは間違いはない。それをモノに出来なかった時点で今回の勝負はついてしまったような気がする。
今回は乗り合いではなく、渡し船を仕立てた。ある意味、贅沢な釣りであるけれど、ポイントの移動など自由に動けるのはメリットである。また、仕立てである為、船の上から竿を振ることも可能だ。但し、今回は魚の群れに当たらず、風雨と波も少なからずあり、船上での釣りはかなり厳しい状況であった。こればかりは、タイミングが悪いと諦めるしかない。
斜里川にある「さくらの滝」を訪れてみた。時は8月、殆どの個体は婚姻色に染まり、写真的には見栄えが良いとは言えない。ただ、これだけの数が頻繁にジャンプする場所は貴重であり、当のサクラマスにとっては、上流への遡上は子孫を残す命がけのものなのだ。