出発前から眠くなった場合は無理をせず、仮眠をとると決めていた。睡魔が襲ってきても、一時間も眠れば昔は眠気がとれていたけれど、決して若いとはいえない歳となり、仮眠のつもりが目を覚ますと辺りは明るくなり、道東特有の朝霧に包まれていた。
西別川は、僕が餌釣りからルアー釣りへ転向することになった川である。今となれば、もっと近場で釣れる場所はあるだろう。それどころか、西別川も荒廃が加速しているようで、上流域でさえ砂が多く目につくようになった。昔は川一面を覆っていたバイカモもここ数年で激減しており、往年の流れを知る釣り人は今の西別川を目にするとため息しか出ないかもしれない。そんな西別川は典型的なスプリングクリークであり、摩周湖の伏流水が水源とされている。道東の川らしく、川原らしい場所は少なく、溝の中を水が流れている・・・そんな川だ。
激減したバイカモだが場所によっては、流れの中に揺れている姿をみることが出来る。今年は少し開花が早いようで、少ないながらも水面に小さな白い花を咲かせていた。
西別川の優勢魚種はアメマスで、これにヤマメとニジマスが少し混じる。オショロコマも生息しているが、年々数が少なくなっているようだ。最上流域には川鱒も生息していると言われているけれど、孵化場の橋から上流は釣りをすることが出来ない。それより下流でも、稀に川鱒が釣れたという話も聞くけれど、狙って釣れる魚ではないだろう。
西別川の河畔林はコゴミとイラクサ、それにトクサが群生している。トクサは流石に食する事は出来ないけれど、前者2つは食用となる。もっとも、イラクサについては仲間からの教えなのだが、その両者共にあれだけ大量に生えていれば、それこそ幾らでも採取出来るであろう。
この時期の河畔林には、オオバナノエンレイソウが群生している事が多い。場所によって少し遅い群落もあったので、見頃は5月下旬早くというところなのかもしれない。
道東は5月と6月はヤマメが禁漁である。禁漁の目的は銀毛ヤマメの降海保護という事なのだが、西別川では数は少ないとはいえ、この時期はルアーを追って釣れてしまう事も少なくない。当然ながら即リリースの対象なのだが、一枚だけWebにも掲載することをお許し願いたい。このヤマメは恐らく3年魚と思われる個体だろう。顔つきは既に鱒そのものである。道東のヤマメとしては、かなりの良型の部類だと思う。このヤマメも7月の声をきくと、一気に魚影が薄くなる。