2011 秋の八重山諸島(波照間島)

波照間島(はてるまじま)は八重山諸島の一番南に位置する。石垣島から高速船で片道一時間と、他の島々よりも離れており、有人の島としては日本最南端である(北緯24度2分 東経123度47分)。沖の鳥島が日本最南端(北緯20度25分 東経136度05分)であるけれど、無人島であるし、民間人が簡単に上陸できる場所ではない。しかし、沖の鳥島は島を名前がつくものの、実体は岩礁であり、波照間島が事実上の最南端と言っても過言ではないと僕は思う。

当初、今回の旅は釣りを除き、一日は一度も訪れた事のない離島へ渡ろうと当初は竹富島を考えていた。沖縄らしい景色の竹富島は観光地として有名であるけれど、三連休初日という事もあり、西別川氏から恐らく滅茶苦茶混雑しているとの話をお聞きし、急遽渡る場所を変更して波照間島を訪れる事にしたのだが、結果的にこれは正解だったようだ。波照間島は観光客の数も少なく、レンタルした自転車でゆっくりと島内を回ることが出来たし、1度は行ってみたいと思っていた最南端の地を訪れてみたかった。島は静かでサトウキビ畑が広がる他は、何も無い場所であった。集落には売店や食堂もあるけれど、ここでも基本的にのんびりとした時間が流れ、一日三島島巡りのような慌ただしいツアーとは無縁の時間が流れていた。

(※追記 波照間〜西表〜由布島を一日で駆け回るツアーもあるそうだ。でも、内容を確認すると無謀としか言いようが無いコースであり、これはとてもお勧め出来ません。もっとも、これは僕の個人見解であり、とにかく行った事実があれば良いという人には良いのかも。でも、あまりにも慌ただしい旅は如何なものでしょうね。西表などは、数日でも足りないくらい色々な魅力がある島であるのに。まあ、日帰りで波照間を訪れた僕がいうのも何ですがね。)

風力発電は可倒式であるそうだ。台風を避けるアイデアらしい。

集落を南東方向に向かうと、二基の風力発電塔を見かけた。北海道でも海岸線に多いそれだが、支柱が特徴的であった。帰宅してから調べてみると、可倒式であ るらしい。八重山諸島はフィリピン沖で発生した台風が一番勢力を増し、尚且つ北東へ進路を変える通り道に位置している。この地の家が伝統的に平屋であるの は、台風への備えでもあると聞いている。それ故、風力発電も一般的な支柱であれば倒れてしまう可能性が高いという事なのであろう。事実、過去に倒壊した事 もあるらしく可倒式は台風対策の一つの手段であるそうだ。

波照間空港 現在では事実上の閉鎖状態。

滑走路横で牛が草をはんでいた。

波照間島にも空港がある。かつては定期便が運行していたそうだが、数年前から路線が全て休止となり事実上使われていない空港である。ターミナルの建物はシャッターが下り、人の気配は皆無である。空港周辺も人の姿は殆どなく(わナンバーの車が一台来たけどね)、寂しい雰囲気を醸し出している。その滑走路脇の草地で何頭かの黒牛が草を食んでいた。ちょっとした違和感を感じたが、使われていない空港近くはとても静かな場所であり、牛の放牧には適しているのかもしれない。

空港近くの道路。歩道まで整備されているが、殆ど管理されていないような気がする。

空港近くで街路樹として植えられていたアダンタコノキ。

空港周辺の道路は立派な舗装された二車線道路だ。歩道も整備されているものの、ここを歩く人などいるのだろうか?離島復興の一環かもしれないけれど、元々殆ど車も通らない道にこれは過剰なというか無駄な投資のように思えてしまう。観光地化されていない離島であるが故に、こうした光景には違和感を感じてしまう。

日本最南端の碑がある場所は、この様な雰囲気である。

日本最南端の碑、正確には写真の通り、日本最南端平和の碑

こちらが元祖である日本最南端の碑

島の南に日本最南端の碑が建っている場所がある。その碑の場所が最南端かどうかは別として、やはりそこを訪れた意義は自分自身は感じた。日本の最北端と最東端は共に北海道にあり、そこに住んでいる身としては、最南端は感慨深いものがあるのだ。残りは日本最西端の与那国島だが、この地は八重山からも近くて遠いのだ。

(注)行政上の日本最南端は、沖の鳥島であることは先に書いているけど、最北端は何処かという事になると事実上は宗谷岬沖にある弁天島、最東端は小笠原諸島の南鳥島である。但し、日本政府は択捉島を領土としている為、最北端は択捉島という事になる。ただ、常識的に一般人が行ける場所という事になると、最北端は宗谷岬、最東端は根室半島の納沙布岬となる。最南端は波照間島であり、最西端の与那国島だけは正式かつ民間人も簡単に訪れる事の出来る日本の端であるとのことだ。

日本最南端の碑から海岸に向かう岩場にて

日本最南端の碑から海岸に向かう岩場にて

日本最南端の碑から海岸に向かう岩場にて

日本最南端の碑から海岸に向かう岩場にて

石垣島と同じように、波照間島の海岸にある岩も基本は隆起珊瑚質の岩である。この為、最南端の碑から海岸へ向かう間、岩場を歩く間にも様々な珊瑚の模様が入った岩を見ることが出来る。また、その岩には様々な植物が自生しており、飽きることをしらない。

高那崎にて

外洋である波照間島南部の海の色は、文字通り青い。

最南端の碑から海岸へ出ると、そこは切り立った崖となっていた。この先は広い太平洋があるのみで、次の陸地はフィリピンである。切り立った崖であるため、リーフの様な穏やかな海とは違い、文字通り青い海が広がっていた。以前、石垣島の御神崎を訪れた時もこんな海の色であったけど、この色が本当の南国の海の色なのだろうね。

星空観測タワー 波照間では、南十字星も観測出来るそうだ。

日本最南端の碑から少し東側に、星空観測タワーがある。ちなみにこのタワーの先が高那崎である。この波照間島は、人的な明かりが少なく、偏西風にも影響されない為、良好な星の観測が出来る地という事だ。日本では南十字星(サザンクロス)も良好に観測出来る地でもあるらしい。ちなみに季節は12月下旬頃から6月中旬だとか。何せ南半球にある星座だからね。観測が冬季なのは、地軸の傾きと、それが夜になるとどうなるかが理由だ。ちなみに波照間島に限らず、八重山諸島は北回帰線(北緯23度付近 長い周期で変動する為)の少し上に位置するため、夏至の頃はほぼ真上に太陽が来ることになる。

いたる場所にあるサトウキビ

島の北西で浜に降りる道を下ると、そこがニシ浜。曇っていても、海の色が美しかった。

ニシ浜にて。

日本最南端の碑を更に西へ向かい、波照間港の少し前を海に下っていくとそこがニシ浜である。この日は曇りであったけど、道路から見えるニシ浜の海の青さは感動物である。これで晴れたらどうなるのかと思うくらい、沖に行くに従い藍色に変わるその色は波照間ブルーと称される。このニシ浜は波照間島で唯一遊泳が出来る浜で、脱衣所やトイレなども整備されており、近くに民宿や食堂もあるので、遊びに行くには利便性は高い。それでも、やはり雰囲気は波照間であり、のんびりとしたムードを楽しむ事が出来る場所だと思う。ちなみに地図などではニシ浜を西の浜と書かれている場合が多い様だが、このニシという言葉は波照間言葉で北を意味するとの事だ。だから西の浜や西浜は、間違いでありニシの浜あるいはニシ浜と正しいと聞いた。

高速双胴船ぱいぱてぃろーま 2010年8月に就航したばかりの新型船である。

波照間島へのアクセスは、高速船が二社運航している。一つは安栄観光で、もう一つが波照間海運だ。今回は安栄観光のツアーを利用したけど、写真は波照間海運の新型船ぱいぱてぃろーま。(パイパティローマとは、波照間島の南にあるとされた伝説上の島の名前である。)この船は特徴的な双胴船であり、カラーリングも他の高速船に比べて派手なYellow。

2012年6月追記

石垣島~波照間島間の高速船と貨物船を運航していた波照間海運は昨年12月11日以降、高速船の営業を休止している。貨物船は行政・住民の要望を受け、就航していたらしいが今年2012年5月でこちらも運航休止となった様だ。補助金の打ち切りと原油価格の高騰で経営が行き詰まったのが原因の様で観光への影響よりも、波照間島に住む方々への影響が心配である。特に危険物である石油の運搬が現段階では出来ない様で、現在航路を持つ安栄観光が資格申請を行っているらしい。何れにせよ、航路が無くなれば離島の生活は成り立たなくなる。早急な解決を願う次第だ。

ちなみに波照間航路は外洋を走る為、太平洋の波をまともに受ける事が多い。従って、リーフ内である他の高速船とは違い揺れる路線として有名らしい。特に秋から春の季節は、北西からの季節風の影響で波が高い事が多く、欠航も多い時期でもある。サザンクロスが見たくてと冬に渡航しようとすると、足止めを食らう可能性があるので日程等に余裕を持つ事と船に弱い人は必ず酔い止めを飲んでおく事をお勧めする。釣り船と違って船が大きいので比較すれば揺れは少ないけど、今回も帰りはウネリが入り船になれない観光客から悲鳴が聞こえてきた。実際の波は2~3mくらいなので、まだまだ余裕があるといった運行であったと思うけど、5mくらいの波でも運行することがあるようで、僕はちょっと引いてしまいます。

島のカフェにて

集落にて

日本最南端の自動販売機。そう書いてあるし…。

高那崎付近のパノラマ写真(クオリティ低いですが、ご容赦)。クリックすると最大サイズで開きます。

数社ばかり、このような物を発行しているらしい。これは自治会発行の入島記念証明証。

今回の波照間島では、宿で波照間島サイクリングツアーを申し込み渡航した。フリーでも良かったけど、一番の問題はレンタルサイクルは島の集落にあり、港から結構な距離がある事だった。ツアーであれば港までの送迎があるので、その点は一安心なのだ。もっとも、島を歩くという旅もあっても良い。でも、それが目的じゃない限りは素直に送迎は考えた方が良いと思うね。特に暑い季節はかなり大変だと思う。というのも、波照間島は地形的に島の中心部が高くなっており、二つの集落は島の中心部に位置する。多くのレンタルサイクルは中心部にあるため、坂道をのぼる事になる。また、定期船で観光客が下船するタイミングでしか事実上営業していない店も多い様で、下手な時間に自転車を借りたくても借りれないという可能性もあるからだ。

また、島を自転車で回る事は可能だけど思った以上にアップダウンがある為、脚に自信がない人はスクーターか電動アシスト付き自転車も考慮に入れた方が良い。レンタカーもあるけど、石垣島などに比べると、かなり高額であり人数が集まらないとお勧め出来ないし、車で回るほど島は広くはない。それ故、やはり自転車がのんびり出来て良いのかなと思う。ただ、自転車は普通のママチャリ故に坂はかなり厳しいかも。まあ、その時はゆっくり押してでいいのではないかな。

島には一応、食堂やカフェなどもあるけど探しにくいかもしれない。入った店は食事は、「鉄板焼き/お好み焼き いでよ」と「kukuru cafe」。前者では鉄板焼きやお好み焼きじゃなく、ソーキソバを頼んだけど、美味しかったです。ソーキもトロトロで石垣の明石食堂の様だったな。後者では、シークヮーサージュース。流石に自転車に乗っているので、ビールはちょっとね。まあ、駐在さんが一人いるだけの島だから捕まる事はないと思うが、そうは言ってもキマリを守るのが僕の信条ですから。

そういえば、自転車で漁港を訪れた時、埠頭にパトカーが停まっていた。近くに島民と思えるオジサンが一人、高速船から下船する様子を眺めていた。あれ、駐在さん何処にいるんだろうとそのまま観察していると、近くにいたオジサンはパトカーに乗って港を後にしておりました・・・。離島の駐在さんって私服でいいのかしら。

そんな波照間島は朝から夕方という短い時間でしたが、有意義な過ごし方をしたような気がします。サトウキビ畑が広がる島を、のんびり自転車でまわる。沖縄時間などという言葉がありますが、波照間の様な離島がその言葉に合う様な気がします。単にそこを訪れただけで満足という旅人にはお勧めしませんが、日常を忘れ、そののんびりとした時間に身を任せる旅が好きであれば気に入る島じゃないのかなと波照間を訪れて思いました。

 

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