秋の味覚

生筋子をほぐした物

9月になると鮮魚店だけではなくスーパーマーケットにも生筋子が並ぶけど、このタイミングは卵が未成熟のものも多く、不漁の予想がされていても価格的にはまだ手が届くレベルではあると思う。

皮が柔らかく粒の大きな物が一級品ではあるけれど、30年前くらいは鮭が捕れすぎて、それこそ生筋子などは値崩れを起こした事もある。最安値では1kgパックで1980円なんて量と価格で売られていたものだ。

もっとも、この頃でも原価が安いにも関わらず、観光地のイクラ丼などが値下げしたという事はないようだ。

イクラはともかく、この頃は道内の多くの河川がサケマス増殖河川に指定されており、盛んに放流を行っていた時代だった。その後、豊漁過ぎて値崩れを起こしたことが理由なのか、増殖河川の指定が次々と解除された事や孵化場の重鎮が定年退職でいなくなったという事もあるらしく、放流量の低下と共に回帰数も減少しているのが昨今の鮭事情だ。

もっとも、単純に放流量を増やせば回帰数が増えるかというわけではないらしく、海水温やベイトの状況など複合的な理由がありそうだ。

道央でも鮭の遡上が始まっている様で、小樽で言えば南樽市場の隣を流れる勝納川の深みには結構な数の鮭が遡上していた。川とは違うけど寿司屋通り脇の小樽運河でも、鮭が入り込んでいる様で観光客が足をとめて見物していた。

生筋子に話は戻るけどシーズンが進むにつれて粒は大きいけれど、皮が固く、口の中でプチプチする食感の物が多くなる。この頃は寿司屋さんが年末年始用のイクラを作る時期にあたるけど、こうしたお店のイクラはそれなりの柔らかさに仕上がっている。

昔から、どうやって皮が柔いイクラになるのか疑問だったのだけど、どうも酵素を使って皮を柔らかくしているようで、ミオラという単語を何年か前に居酒屋さんで聞いたことがある。

業務用の食品添加物なので一般的には目にすることはない代物だけど、炊飯用の他に食肉用の製品もある。人工的に熟成を促すと効能が書かれているので、タンパク質を分解しているのかしら?

身体に害があるわけではないようだけど、いずれにしても小売りはしていないものなのでどうでも良いのだがね。

今週のグルメ

醸し人九平次 山田錦 EAU DU DÉSIR 2019 希望の水という意味らしい。

名古屋 萬乗醸造の作る「醸し人九平次(かもしびとくへいじ)」。海外でも人気の日本酒で、一時期は逆輸入を行っていたとかいないとか。

昔、機内誌で紹介されていた事を思い出したけど、だからと言って飲んでみたいとは思ったことはない。だって、紹介されていた銘柄はヴィンテージワインの様な価格だったので、手頃な価格の存在を知らなかったからだ。

今回、手頃な価格で売られていたのと、狙っていた銘柄が売り切れていたので購入してみた。味わってみて感じたのが、海外で人気が出るのも理解出来る味だと思う。

但し、この手の物は嗜好品だ。ワインの様にテイスティングノートが公式サイトに書かれているけど、いくら評価が高くても好みまではカバー出来ないから、あくまでも参考程度ではある。

それでも、飲んでみる価値はある酒だと評価したい。

もちきび ようするに昔の品種というか、原種に近いトウモロコシ

気持ち悪がって手を出さない人も多いかもしれないけど、”もちきび”と言われるトウモロコシで粒がまだらになっている品種を見かける。昔からあるトウモロコシだと言えるのだけど、個人的には現在のスーパースイートコーンより、こちらの方が魅力的だ。

この後に出てきたクロスバンダムなどの品種も好きだけど、味的には写真のもちきびの方が好みではある。問題は入手性が悪い事と価格もそれなりにするくらいかな。

ガザミ(ワタリガニ) かなり大型だ

今週もガザミが市場に売られていたので、迷惑ながら居酒屋さんに持ち込んで汁物にして貰った。出汁については花咲に負けるけど、ガザミの出汁も上品で美味しい。特に日本酒を飲んでいる時は好ましい味といえる。

ガザミ汁 上品な一杯

ガザミ

近海産ガザミの味噌汁

札幌では殆ど流通しないみたいだけど、小樽や余市の市場で売られている蟹の一種。別名ワタリガニと呼ばれていて、一番下の足先がヘラ状になっていて海中を泳ぐのが得意らしい。

また、同じくヘラのような脚を持つヒラツメガニと呼ばれる蟹も市場に出ているけど、同じくワタリガニ科の蟹である。こちらは地元でヘラガニと呼ばれている。

写真の蟹はガザミ(ワタリガニ)でかなり大型の物であったけど、ケガニなどに比べると価格は桁が一つ違うレベルで廉価だ。ただ、ガザミ系の蟹は味が良く、特に今回のような汁物であればケガニよりも僕は美味しく感じる。

南西諸島のノコギリガザミも名前の通りワタリガニ科であり、そちらも非常に美味である。これについては本家サイトの写真集に掲載されている。